
「咬み合わせが気になれば、子どもの頃は小児歯科へ、永久歯になったら矯正歯科へ相談しましょう」などということが、かって言われていたことがありました。
こういった話は間違っていると思います。なぜかというと、乳歯列や乳歯の中にとても貴重な不正咬合に関わる生活習慣や習癖の情報が隠れていることを最近痛感するからです。
今、私が特に気にかけているのは乳歯の咬耗です。咬耗というのは歯同士がこすり合わされて、歯が削れてしまう変化のことです。
本来人の歯は長時間当たっているべきものではありません。たとえば食事のときに顎を動かして食べはしますが、歯同士が接触する時間はとても短いものです。食事中に上下の歯同士が当たると、顎は反射的に口を開くようにできています。リズミカルに食べるためでもありますし、顎の骨や歯を支える骨や歯周組織と呼ばれる、歯を支える構造物を守るためでもありますし、何より歯が壊れるのを防ぐために、私たちの体はそんな反射機構を持っています。
一方で、歯同士を当ててしまう時間が、多かれ少なかれ私たちにはあることが最近の研究で分かってきています。すなわち歯ぎしりや食いしばり、tooth contact habitと呼ばれる習癖群です。ご本人やご家族がやっていることに気が
つかない事がかなりの頻度で多い癖です。歯同士を当てている程度や量や方向は、咬耗に現れます。
不正咬合を有するお子さんたちの乳歯には、かなりの頻度で咬耗が認められます。咬耗の程度や形が不正咬合とかなり関わりあっている、というのが私が今、日々お子さんの口の中を見ながら痛感することです。
子どもの歯は抜けたら天井に投げたり縁の下に投げたりしないで、大事に取っておくことをお勧めしたいと思います。
そして乳歯のうちから、矯正歯科医のかかりつけ歯科医を持つことをお勧めいたします。
最終的に何の治療もしなくても、万一矯正治療が必要になったときに、よりよい矯正治療になることは間違いありません。
「永久歯になったら矯正歯科へ」では、乳歯がもたらしてくれる大切な生活習慣の情報を、矯正歯科医が知ることができないのです。歯並びが気になったら早めに矯正歯科を受診して、乳歯の状態を見てもらい、記録をとってもらいましょう。
繰り返しになりますが、将来万一矯正治療が必要になった時に、必ず役に立ちます。
※ここでお伝えしている矯正歯科医院とは日本矯正歯科学会の認定医がいる歯科医院を指しております。近年、マウスピース矯正を中心に手掛けている歯科の先生で、矯正歯科の看板を掲げている方もいますが、かみ合わせや歯並びの治療や研究を専門とする、日本最大の矯正歯科の学術団体である日本矯正歯科学会と無関係、もしくは未加入の先生も散見されます。そういった先生方の矯正治療を否定するつもりはありませんが、何分にも矯正歯科治療は一度始めてしまうと転医が難しくなる場合も多く、また高額な治療でもありますので、始めてから後悔されてお気の毒な方もいます。それゆえ十分な検討をしてから矯正治療を始めるのは大切と考えております。三条市だと私を含めて4人の日本矯正歯科学会の認定医がおりますので、矯正治療をご検討の方は、そちらの歯科医師がいる矯正歯科医院もしくは歯科医院にも一度ご相談されることをお勧めいたします。三条市の日本矯正歯科学会の認定医はリンク先の日本矯正歯科学会の認定医のページをご覧ください。