まずは歯を抜かないですむように、顎を育てましょう! (成長期の大切さ)


基本的には健康な歯を抜きたくない、ということは歯科医師なら通常誰でも考えることです。
大人の矯正治療で歯を抜く場合は、歯を抜く以上のメリットが矯正治療の結果、得られる場合に限られます。
だから理想を言えば、すべての大人の矯正治療でも歯を抜かないで済めば素晴らしいことです。
しかし、あまりにも顎が小さく育ってしまって歯が並びきれずに凸凹になりすぎて噛みにくくなってしまった、
あるいは下顎が前にずれて育ちすぎてしまい、前歯で噛めなくなってしまったために下顎前歯を後ろに下げるため、永久歯を抜かなければいけない、
あるいは上顎が前にずれて育ちすぎてしまい、唇が閉じられずに口呼吸になってしまう、前歯で物を食べにくい、
下顎前歯が上顎前歯の後ろの歯肉を咬んでしまい、歯周組織が痛むので、上顎前歯を後ろに下げるため、永久歯を抜かなければいけない、
あるいはかみ合わせがあまりに左右非対称に育ってしまい、左右バランスよく噛めない等色々な理由で、永久歯を抜かざるを得ないこともたびたび起こります。
顎の形、体の固有の使い方(場合によっては癖や偏り)は、遺伝的に引き継がれるものは多いのは確かです。でもだからと言ってかみ合わせの悪い親御さんの
お子さんが皆かみ合わせが悪くなるわけではありません。特に口、かみ合わせは使うための筋肉と骨の塊ですから、どうしても毎日の生活の刺激の影響を受けます。
私たちの口は1日通常1000回以上は噛むことに使われます。戦前の人たちは数千回噛んでいたという話もあります。現在絶対的に噛む回数が少なくなっているのは確かです。
いくら良い素質を持っていても、使わなければその素質は発現されないのは当然です。良い咬み合わせになる素質がある人でも良い刺激が少なければ顎は育たず、悪い刺激の
影響を受けて歪んで育つことになります。歯ぎしりや食いしばり、片噛みや偏った姿勢での生活、、舌の押出す癖、唇や舌を噛む癖、等々、良い咬み合わせが育つ敵になる刺激は
たくさんあるのです。
良い形に良い大きさに顎を育てるために毎日の良い生活習慣が大切です。そしてその上で、噛みやすい状態を目指して成長期の矯正治療は行われます。
成長期の矯正治療の1番大きな目的は噛みやすくすることだと思います。
将来大人の矯正治療で歯を抜かないで済むように成長期の生活の仕方や、必要に応じての矯正治療を考えていただきたいと思います。





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